ベンダー任せは「信頼関係が足りない」から起きるのではありません。 ユーザー側に「判断するための論点」が揃っていないから起きます。
「ベンダーに任せきりになっている」「ユーザー側で判断できない」—— こう相談される案件は、毎年一定数あります。 そしてほぼ全てのケースで、問題の根は同じ場所にあります。 ユーザー側が、議論の論点を自分の言葉で整理できていないのです。
論点が整理されていないまま打ち合わせに臨むと、ベンダー側の提案した枠組みに そのまま乗るしかなくなります。これは「信頼している」のではなく、 「対等に議論するための道具を持っていない」だけです。
この記事では、ユーザー側が主導権を取り戻すために最低限持つべき 3つの論点フレームを紹介します。特別なツールもフレームワークも不要です。 A4用紙3枚で始められます。
「この打ち合わせで何を決めるか」を先に書く
最もシンプルで、最も効果があるのがこれです。 ベンダーとの定例会議の前に、一行だけ書きます。
今日の会議で、BOTTISが決めたいことは〇〇である。
これを書くだけで、会議の性格が変わります。 「ベンダーから説明を受ける会議」から「ユーザー側が決定する会議」に、 主語が入れ替わります。書けない場合は、そもそも会議を開く意味がない ——という判断もできます。
BOTTISが支援に入るときは、必ず会議の前日にこの一行をユーザー側と一緒に書きます。 書けない日は、会議を延期することもあります。それで問題が起きたことは、ありません。
判断の観点を、事前に揃える
ベンダー提案を前にすると、つい「良さそう / 良くなさそう」という 感覚的な反応になりがちです。それを防ぐために、判断の観点を 事前に定義しておきます。BOTTISが使う基本4観点はこれです。
| — Axis | — 問い |
|---|---|
| 機能 | 業務要件をどこまで満たすか。代替手段はあるか。 |
| コスト | 初期 / 運用 / 将来拡張。TCOで見たとき妥当か。 |
| 運用 | 誰が使い、誰が保守するか。現場に乗せられるか。 |
| リスク | 失敗したとき何が起きるか。後戻りは可能か。 |
提案を受けるとき、この4観点を紙に書き出してから臨みます。 提案内容を4観点にマッピングしながら聞くだけで、 質問が自動的に出てきます。「運用の部分が聞けていません」 「リスクシナリオの説明がなかったです」という具合です。
質問が自動的に出てくる状態になれば、ベンダー任せは終わっています。
「決まったこと」と「宿題」を毎回記録する
会議の最後に、必ず次の2つを分けて書き出します。
- 決まったこと(Decided)
- 宿題 / 持ち帰り(Open)
そして重要なのは、それぞれに「誰が」「いつまでに」を付けることです。 「次回までに確認します」では、誰が何をいつまでにやるか分からず、記録になりません。 「4/15までに、情シス部の田中が、セキュリティ基準書を持参する」が記録です。
この記録を継続すると、不思議なことが起きます。 今まで「なんとなく進んでいた」案件の中に、 実は誰も決めていない事項が山ほどあったことが見えてきます。
ベンダー任せの案件で最もよく見つかるのは、 「ユーザー側もベンダー側も、誰も決めていないこと」である。
3つのフレームで足りる理由
複雑なフレームワークやツールは、いらないのかと思われるかもしれません。 BOTTISの経験では、この3つで十分です。
大事なのは、フレームそのものではなく、毎回使うことです。 毎回の打ち合わせの前に1行書く。4観点で聞く。最後に2リストで記録する。 これを3ヶ月続ければ、ベンダーとの関係は確実に変わります。
ベンダー任せの本質は、信頼でも能力でもなく、論点の整理状態にあります。 そしてこれは、今日からでも始められることです。 A4用紙3枚と、次の定例会議までの1時間があれば、準備できます。
もし、整理しようとして手が止まるなら、それ自体が論点です。 一度一緒に棚卸しをしましょう。