停滞しているプロジェクトほど、会議が増えます。しかしそれは「コミュニケーション不足」ではなく、 会議で何を決めるのかが定まっていないからです。
新しいプロジェクトに入ると、最初に必ず尋ねる質問があります。 「この会議は、何を決めるための会議ですか」——これに即答できるプロジェクトは、 実は多くありません。ほとんどの停滞プロジェクトで、定例会議は 「とりあえず集まって進捗を確認する場」になっています。
その「進捗確認」の中身はというと、 各担当者が現状を報告し、誰も何も決めないまま次回へ持ち越す——この繰り返しです。 会議は増えるのに、意思決定は進まない。これが「会議ばかり増える状態」の正体です。
「コミュニケーション不足」という誤診断
停滞の原因として最も多く聞く診断は「コミュニケーションが足りていない」です。 その対策として選ばれるのは、会議の追加や情報共有会の開催、 チャットツールの導入といった「伝達量を増やす」施策です。
しかし、情報が流れていないから停滞しているのではありません。 流れてきた情報をもとに、誰が何を判断すべきかが決まっていないのです。 いくら情報を増やしても、判断の置き場所がなければ、情報が溜まっていくだけです。
停滞プロジェクトに足りないのは情報ではなく、判断である。
論点設計の3レイヤー
会議を「判断ができる場」に変えるため、まずそこで扱う論点の種類を分けることから始めます。 BOTTISが現場で使っているのは、以下の3レイヤーです。
レイヤー1 — 事実確認
「今どうなっているか」の共有。これは本来、会議でやる必要はありません。 ドキュメントやダッシュボードで非同期に行えるものです。 会議で時間を使ってしまっている場合は、事前共有に移すだけで会議が半分になります。
レイヤー2 — 方針選定
「複数ある選択肢のうち、どれを選ぶか」の議論。 これは会議で扱う価値がある論点です。ただし、選択肢が整理されていない状態で 会議に持ち込むと、選択肢を作る作業から始まってしまい、決まりません。 選択肢は事前に整理してから会議に持ち込むのが鉄則です。
レイヤー3 — 承認
「議論の結果を、正式に決定する」場。これは短時間で終えられます。 承認者がその場にいればその場で決め、いないなら持ち帰りにして、判断の期限を決めて終わります。 承認レイヤーが曖昧なまま方針選定レイヤーで議論し続けると、 「議論はしたけど何も決まっていない」状態になります。
意思決定の置き場所
論点を3レイヤーに分けたら、次は「それぞれをどこで扱うか」を決めます。 ここでよく曖昧になるのが、会議で扱うべきものと、非同期で扱うべきもの の境界線です。
- 事実確認 → 非同期(ドキュメント / チャット)
- 方針選定 → 会議(ただし選択肢を事前に整理)
- 承認 → 非同期 or 会議末尾(期限付き)
分けてみると、会議でやる必要のないことを、どれだけ惰性で持ち込んでいたかが分かります。 そこを外すと、ほとんどのプロジェクトで会議時間は半分以下に収まります。
立て直しの順序
停滞したプロジェクトの会議を立て直す場合、次の順序で進めます。
- 現在開催されている全会議を棚卸しする
- 各会議で扱われている論点を3レイヤーに分類する
- それぞれの論点の「決定者」を明確化する
- 事実確認レイヤーは非同期に移す
- 残った会議の議題を「方針選定」「承認」で再設計する
BOTTISがPMO支援に入るとき、最初の2週間はだいたいこの作業に費やします。 華やかさはありませんが、この作業を経ると、会議で判断が進みやすくなります。
会議が多いこと自体は、悪ではありません。問題なのは、会議の中で誰も判断を下さないことです。 その場で判断が下る会議は、たとえ多くても、参加者に疲労感を残しません。 「次に何をすべきか」が明確になって終わるからです。
もし今、プロジェクトが会議ばかりで進まないと感じているなら、 会議を減らす前に、 「この会議で何を決めるのか」を一つずつ書き出すところから始めてみてください。 それだけでも、会議の役割が整理しやすくなります。