構想資料を直しても、実行はなかなか動き出しません。 手を入れる場所が、資料の中ではないからです。
DX構想の資料は整っている。経営層も理解している。 ロードマップも引かれている。それなのに、半年経っても実行フェーズに たどり着かない。このような状況は、珍しくありません。
BOTTISがこの種の案件に入るとき、まず構想資料を疑うことはしません。 構想が悪いケースはむしろ少数派です。ほとんどの場合、 抜けているのは、構想を現場に落とし込むところです。
以下、BOTTISがこれまで現場で見てきた4つの典型パターンと、 それぞれの立て直し方を紹介します。
4つの典型パターン
施策が多すぎて、優先順位がつかない。
- 症状
- 構想資料に20以上の施策が並んでいるが、どれから着手すべきかの議論が毎回ループする。「全部重要」のまま止まっている。
- 原因
- 優先順位をつけるための判断軸が揃っていない。重要性と緊急性を分けていないか、そもそも軸の定義ができていない。
- 立て直し方
- 施策一覧を一度リセットし、2軸(例:影響度 × 着手しやすさ)で並べ替える。並べ替える作業を、経営層ではなく現場のキーパーソンと一緒に進めるのがポイント。
担当者が決まらないまま、宙に浮いている。
- 症状
- 施策ごとの「やるべきこと」は書かれているが、「誰がやるか」が空欄のまま放置されている。会議のたびに「次回までに決めます」で終わる。
- 原因
- 担当者を決めるというのは、実のところ、どの部門が責任を持つかを決めるのと同じ。誰も進んで引き受けたがらない領域ほど宙に浮く。
- 立て直し方
- 「主担当」と「協力部門」を分けて書く。主担当は、押し付けても決まらない。各部門がいま持っている役割とどうつながるかを示してから、決めにいく。
現場への移し方が、設計されていない。
- 症状
- システムは導入されたが、現場のオペレーションが変わっていない。「新しいシステムを使ってください」という掛け声だけで運用が変わると期待している。
- 原因
- 業務プロセスをどう変えるかの設計、教育計画、旧業務と並行して運用する期間が構想に含まれていない。導入しても現場で使われない理由の大半がこれ。
- 立て直し方
- 導入前に「現場の1日の動き方」をBefore / Afterで書き出す。変わる動作、残る動作、新しく必要な役割を明確化してから導入する。
投資判断の基準が、経営層と揃っていない。
- 症状
- 現場は進めたいが、稟議が通らない。経営層は「効果が見えない」と言い、現場は「やってみないと分からない」と言う。議論が平行線になる。
- 原因
- 投資判断に使う「ものさし」が、経営層と現場で違う。経営層はROI、現場は工数削減や品質、といった具合に軸がずれている。
- 立て直し方
- 経営層が投資をどんな基準で判断しているかを先に聞き、効果をその言葉に翻訳し直す。現場の言葉のまま経営に持っていっても通らない。
共通する見直し方
4つのパターンは表面的には違って見えますが、共通する処方箋があります。 それは「構想と現場の間を、言葉で埋める」ことです。
DX構想が止まる主な理由は、構想と現場の間にある「翻訳作業」が 誰の責任でもないままになっていること。経営層は現場を知らず、 現場は経営層の判断基準を知らない。その間を埋める役割が設計されていないのです。
DXが止まる場所は、ほとんど毎回、同じ「間」である。
BOTTISが支援に入るとき、最も多く担うのがこの「間を埋める」作業です。 目立つ仕事ではなく、構想策定ほど分かりやすい成果物が出るわけでもありません。 しかし、これがないとDXは実行フェーズに入りません。
もし今、DX構想が止まっていると感じるなら、構想資料はいったん閉じて、 構想と現場の間に何が抜けているかを棚卸しすることから始めてみてください。 大抵の場合、答えはそこにあります。