現場を閉めることは工程表で決められます。 書類をやめることは、誰かが決めない限り決まりません。
数字は減っている
日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)の2025時短アンケートによると、所定外労働時間の全体平均は29.2時間。 前年の31.5時間から減り、この調査では初めて20時間台になりました。
厚生労働省の毎月勤労統計調査でも、建設業の総実労働時間と所定外労働時間はいずれも年度ごとに短くなっています。 2024年4月の上限規制適用にあたっては対応できるのかという懸念もありましたが、 統計上は、規制の開始後も短縮が続いている状態です。
ここまでは、業界として成果が出ている話です。
※ 日建協の調査対象は加盟する労働組合の組合員で、中堅から大手の建設会社に勤める職員が中心です。 地場の中小企業とは母集団が異なる点にご注意ください。
減ったのは、現場が動いている時間
同じ調査で、残業の理由として内勤・外勤のいずれからも書類作成が大きな負担として挙がっています。 外勤者からは、発注者による適正な工期の設定を求める声も出ています。
つまり、時間は減ったものの、書類の量が減ったという話にはなっていません。 減ったのは主に現場が動いている時間です。閉所日を増やし、稼働日を削れば、労働時間は数字として下がります。
書類は違います。提出先が決めた様式は、こちらの都合では減りません。 社内の様式にしても、誰かが「これはもう作らない」と決めない限り残り続けます。 工程表に閉所日を書き込むのと同じようには扱えない。
しわ寄せの行き先
総量が変わらないまま作業時間だけを絞ると、負担は別の場所に移ります。
閉めたはずの土曜日に、所長が一人で事務所に出て書類を作る。 記録上は休日なので、労働時間の集計には出てきません。
若手に任せられない書類が管理職に集まる。 様式や過去の経緯を知っている人でないと処理できないため、人を増やしても分散しません。
提出期限に間に合わせるために、現場での確認を省いて後から書類を整える。 書類は揃っているが、その内容と現場の実態が離れていく。
いずれも、労働時間の数字には表れにくい形で進みます。 統計が改善しているのに現場の感覚が変わらないとき、この辺りで止まっていることが多いと思います。
総量が変わらないまま時間だけを絞れば、負担は集計に表れない場所へ移るだけである。
総量を減らすために決めること
書類を減らすには、減らす対象を名指しで決める必要があります。 検討にあたって、次の3つをはっきりさせておくと議論が具体的になります。
どの書類が、誰の要求で存在しているか。
- 分けるもの
- 法令や発注者が求めているもの、元請が求めているもの、社内の慣習で続いているもの。この3つを分けて一覧にする。
- 決まっていないと
- 全部が必須に見えるため、どれも削れません。社内の慣習で残っているものは、多くの場合その場で判断できます。
やめる判断を、誰がするか。
- 選択肢
- 現場ごとに所長が判断するのか、本社が一律に決めるのか。
- 決まっていないと
- やめて問題が起きたときの責任を誰も取りたくないため、現場では前例どおり作り続けます。判断者を決めることが、実際には最も効きます。
発注者との交渉を、いつやるか。
- 選択肢
- 工期や提出物について、契約前に話すのか、着工後に相談するのか。
- 決まっていないと
- 着工後の相談は個別の頼み事になります。契約前であれば条件の話として扱えるため、同じ内容でも通りやすくなります。
BOTTISが入るときは、まず書類の一覧を作るところから始めます。 現場で1か月に何を何部作っているかを書き出すと、たいてい想定より多い。 そのうえで、法令・発注者・元請・社内慣習に分け、社内慣習の分から順に判断していきます。 ツールを入れるかどうかは、総量が見えた後の話です。
一人でやっているため、扱える範囲は限られています。 システムの開発や導入そのものは、必要に応じて提携先を紹介する形になります。
出典:日本建設産業職員労働組合協議会「2025時短アンケート」調査結果(日本工業経済新聞社の報道による)、
厚生労働省「毎月勤労統計調査」。
所定外労働時間の平均値および残業理由は前者、建設業の労働時間の推移は後者に基づきます。